その日のことは、今でも忘れることができません。
1年前、27歳になったばかりの私は、とにかくはりきっていました。
メーカーに就職して5年目になり、かねてからあたためていた商品の開発にゴーサインが出て、私がプロジェクトリーダーを任されることになったのです。
入社してからずっと、やりたかった企画がようやく実現できることになったのですから、力の入りようはハンパなく(笑)「よかったな、がんばれよ」と上司に励まされ、初めてのリーダー業務に興奮と緊張で胸がいっぱいになっていました。
この時ばかりはプライベートも二の次。
すべては仕事に集中できるように、プロジェクトがうまくいきますように!とそればかり考えていました。
体のことも、全然考えていませんでしたね。
終電で帰ればラッキー、ほとんどがタクシー帰宅。食事もとったりとらなかったりといった感じで、食生活は乱れまくり。
今思えば仕事のこと以外はほとんど考えられない、というか、考えるのが面倒くさいといった毎日でした。
ある日の夜のことです。
その日、プロジェクトメンバーの1人が重大なミスをおかしたことが発覚。
翌日メンバー全員で朝から必死で動き回って、なんとか失敗をリカバーし、遅れを取り戻すことができた時は本当にホッとしました。
あんなに必死になったことも、手応えを感じたことも、激しく緊張したことも、今まで経験したことなかったぐらい。
ホッとひと息ついた時には夜もとっぷりと暮れ「今日はみんなで飲みにいくか!」なんて相談をしていた時でした。
手首からひじにかけての内側が、とても痒いことに気づいたんです。
でも我慢できないほどじゃないし、そんなことより一仕事終わったことの安心感で、とりあえず一時忘れました。
乾杯後、ちょうどビールも一杯目の半分ほどを飲んで、上司との雑談も少し済み、ほっと一息席についたところでさっきの痒みが止まっていないことに気づきました。
そればかりか、さっきより酷くなっているような・・・?
そのときは蕁麻疹だと思ったし、ここで体調を崩すわけにはいかない私は皆より一足早く家路に着きました。
それから1週間ほど痒みは続いたままでした。
私は絶対ここで体調など崩してられなかったので、もし体に何か異変があってもそれを医師から告げられるのが怖かったのですが、「絶対何かおかしい・・・」と思い、意を決して病院へかかることにしました。
翌日はちょうど土曜日だったこともあり、朝になるのを待って近所の皮膚科に駆け込みました。
きっと何か食べたものに当たったんだろう、などと思っていた私を待っていたのは、想像もしていなかった言葉でした。
「これはアトピーですね」
「え?」
アトピー?私が?
だって…小さい頃から肌は丈夫ですし、今まで一度もこんなことなかったですよ?
「最近多いんですよ、あなたのように成人してからアトピーになる人が。これまでにも症状は出ていませんでしたか?軽い湿疹が出るとか、軽いかゆみを感じるとか、肌があれるとか」
そういわれてみると、確かに最近ちょっと肌の調子が悪いな、とは思っていました。
かゆくて肌をかきすぎて、少しですが出血することもありました。
でも、あまりに毎日が忙しくて、特に気にもせずにいて・・・。
まさかそれがアトピーだったなんて、全く想像もしていなかったのです。
先生に宣告されてもまだ半信半疑だった私ですが、処方された薬を使ってかゆみと湿疹がおさまった時、ようやく自分の体に起きていることを痛感したのでした。